講演会の報告

以前お知らせしました通り、6月25日(日)に近江八幡の男女共同参画センターにおいて、雑誌“チルチンびと”の山下編集長をお招きして、講演会「子育て世代の家づくり」を行いました。当日は雨天にも関わらず、多数の皆さんが参加されました。約2時間あまりお話が聞けました。その要旨を、前半と後半の2回にわけて抜粋して掲載いたします。(話題が少し前後したりしますが、時系列的に並んでいます。)

定員の100名を超える約110名の参加がありました
定員の100名を超える約110名の参加がありました

“風土木の家”の取り組みを説明する森理事
パネルや模型も展示
パネルや模型も展示

前半は、戦後の日本の住宅産業がどのような過程を経てきたのか、そしてどんな問題が発生してきたのか俯瞰します。

熱く語る山下編集長
熱く語る山下編集長

○戦後日本の住宅産業は“早く・安く・大量に”を目標にして来た。その結果“ハウスメーカー”という日本独自の会社形態が生まれた。例えばアメリカにも住宅会社はあるが、彼らが売っているのは図面集である。ユーザーは建てたい家を決めて地元のスーパーバイザー(日本の工務店の社長に当たる)に依頼する。工事の職種が細分化されていて、職人は単能工で多くはスパニッシュ系であり英語が通じない。そのためスーパーバイザーは自分流の家を建てる工程の絵入りの本を作っている。材料は大きなホームセンターがありそこに一本いくらで売っている。材工が分離している。工程と予算と品質を守って家が建つように監理するスーパーバイザーという職種が社会的に成りなっている。日本にもこれを取り入れたシステム(オープンシステム?)をしようという動きがあるが、なかなか大変のようである。

○ 日本では“早く・安く・大量に”家をつくる為に職人が足りないという現実があった。熟練工が居なくても良いように、基本的なパーツは工場で作って、現場では組み立てるだけの所謂プレハブ住宅が多くなった。その際、使用部材が自然素材だと使いこなすのに技術が必要なのと、現場での品質が一定しないという問題があった。そこで新建材という石油化学製品が開発され、これが社会的に支持された。そのような素材を使って建てた家にここ15年くらい前から2つの問題が発生してきた。1つはシックハウスでもう1つは経年変化による材料の劣化の問題である。

○ 劣化の問題には2つある。1つは構造部分の劣化。輸入材(米ツガ等)が日本の腐朽菌に弱かったのと壁体内結露で、建て売り住宅は築後20年くらいでいろんなところにガタが出てきた。もう1つは突き板合板(薄くスライスした木を合板に貼り付けたもの)等の表面仕上げ材が劣化して剥がれて来る事。なんとなくみすぼらしくなって来て、これがストレスになる。

○ 1992年に東大が行った調査によると、日本の住宅は平均17.5年で立て替えられているという結果が出た。間取りが悪く住みにくい、表面仕上げ材が劣化して換えたいと思っても構造的な問題で結局立て替えた方が早いなどが原因と考えられる。

○ “早く・安く・大量に”を目指して新建材を多用した結果、それに使われている接着剤、防虫剤、防腐剤、防かび剤等、塗料に含まれる化学物質の充満した部屋にすむ羽目に陥った。機密性の高いアルミサッシの普及がそれに拍車をかけシックハウスが発生した。

○ 山下さん自身もお子さんもアトピーに苦しんだお話をされました。25〜6年前のアトピーの発症率は約3%だったのが、今東京では30%と言われている。発症の気があるという子どもは60%いる。また、化学物質過敏症の発症率は5年まえの調査で約3%だった。

○ 問題はハウスメーカーだけでは無かった。地元の工務店はハウスメーカーと同じような家を少し安く建てたら売れると考え、建材メーカーの勧めるままに新建材を使うようになり、同様の問題が起こったのである。

○ 戦前は住宅は借りるのが一般的であったが、1955年に住宅三法といわれる、公社、公団、公庫の法が整備され、所謂“住宅55年体制”が出来た。結婚して一戸建てにすむ事が人生のひとつの目標になり、政府も施策としてこれをバックアップした。また、高度成長期、バブル期を迎え、早く建てたほうが土地が値上がりして資産価値が上がる、遅れると損をするという風潮になった。損得や社会的なステータスが優先され、そこに住む人間の事が忘れられるようになった。

○ 1988年から89年にかけて3000人程を対象にいろんな調査をしたが、その中で50代の方に“あなたはどんな家を建てましたか?”と聞いてその答えに驚いた。こちらが聞きたかったのは、どのような家を建てたかという中身だったのに、共通して出てきたのはハウスメーカーの名前ばかりだった。家はいつの間にか建てるものでは無く、車のように買うものに成っていた。この事が、いろんな問題を生む結果になった。

○ 日本の住宅はアメリカの中流の市民生活を手本にしてイメージが先行し、そしてハウスメーカーは消費者の要求を無制限に受け入れた。そういう状況が1990年頃まで続き、そして10年程前にシックハウスの問題が発生した。

○ 輸入材の安さと、熟練者の不足から国産材が次第に使われなくなり、海外から安い木材が入り、これをプレカットしたり集成材にしたりして使うようになった。2×4のように組み立てるだけで建つ家、無垢の木を使わずに建てる家が増えてきた。しかし、日本の風土に合わない輸入材が問題を起こした。一例として積水ハウス等が使用した白太の多い北欧のホワイトウッド(モミの木の一種)が腐朽菌に弱くて直ぐに腐ってしまうという問題が起こった。寒い国の木は日本の冬にも強いと嘘を言っていたのである。日本は世界中から製品化された木材を輸入し、それらには大量の防腐剤や防かび剤が使われているのである。

○ この事のもう一つの問題は、アスベストと同じく住む側の人間だけでなく、作る側の人間にとっても非常に危険であるという事だ。埼玉県の土木保健健康組合のデータによれば組合員の死亡率のピークは55才、死因は癌である。防腐剤や防虫剤だらけの加工輸入材を切ったり、カンナで削ったりしている新築現場の大工さんが一番危なく、更に解体現場の作業員はもっと危ないのである。

○ JIAマークやJASマークが付いているといっても安心できない。医者が成分のわからない薬を自分の患者さん出したら大問題になる。だから、工務店も大工さんも自分が使う材料にどういう化学製品が含まれているか知る義務がある。製品に含まれる成分に間しては国際的な取り決めがあって情報公開をしなくてはならない。例えば食品には“食品安全衛生法”が有り、化粧品には”薬事法“が有るのに、住宅に関しては何も無いのが現状である。

○ 地域主義工務店の会が3年間かかって“チルチンびと仕様の家”というのを考えて来た。内容は今年の秋に発表予定だが、厚生労働省の指定する13品目の化学物質の測定値がほぼ0である。建材に含まれる化学物質は表示するように法律で決められているが、実際はされていない。そこで我々が自腹を切って調査し、ようやく11月発売の別冊で発表できる所まで来た。我々だけで無く、日本中の真面目にものを考えている工務店や職人さんが、真剣に自分たちの使う材料の安全性を考えるようになって来たんだと感じている。

後半はいよいよ、“子育て世代の家づくり”の本題に入って行きます。
掲載予定は7月の上旬の予定です。